「三猿の教え」
今回、日光の紅葉を、何か思い出した様に見たくなり、20年ぶりぐらいに日光を訪れてきました。東京から日光までは、アクセスも良いのです。本数は少ないですが、新宿から東武日光まで乗り換えのいらない直通の急行電車もあります。乗り換えをせずに2時間程度で日光まで行けるのです。
日光の紅葉は、下記のイメージです。
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山全体が黄色から橙色に染まる紅葉
真っ赤に染まる紅葉はあまりありません。圧倒的なスケールで、山全体が美しい黄色と橙色に染まるのです。今回、私が思い出した様に見たくなった紅葉スポットは下記です。
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明知平展望台
第2いろは坂をほぼ上りきったところにある明智平。ロープウエイに乗って3分で到着する展望台。日光を代表する人気の展望スポットです。紅葉で色づいた男体山や広大な中禅寺湖、何より中禅寺湖から流れ落ちる華厳の滝。日光の美しさを一望の下におさめることが出来る絶好のビューポイントなのです。
温暖化の影響で昔の様に鮮やかな紅葉では無くなったと地元の人は言いますが、それでも明知平展望台からの絶景に心が震えました。
今回、日光を訪れたのは、「明知平展望台」の景観だけが目的ではありません。日光東照宮の陽明門が修理を終えて、今年の春に晴れてお目見えなったからです。
日光東照宮には、小学生の低学年の頃、一度だけ、訪れたことがあります。子供の頃は寺院や自然の美しさなどは分かりません。親戚の家から近くにあると言っても、再来訪したいとは思いませんでした。東照宮はいつも混んでいて、何より、拝観料もかかるからです。
日光東照宮を訪れたのは、もう40年以上も前のこと。過去に一度行ったことがあるという事実だけで、寺院の美しさやその意味するところなど、全く覚えていませんでした。
世界遺産の日光山内を観光するだけでも広大な敷地のうえ大混雑のため、半日程度の時間がかかります。日光東照宮に行く場合、日光駅で拝観券を事前に購入しておくことをお勧めします。東照宮で拝観券を購入するだけでも40分待ちぐらいの長蛇の列に、並ぶことになるからです。
日光東照宮は、陽明門と並んで下記が有名です。
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三猿の彫刻
三猿も今年の春に修理を終えて、鮮やかな色彩になりました。三猿とは、「見ざる、聞かざる、言わざる」の知恵を示した猿の彫刻です。誰でも一度は、「見ざる、聞かざる、言わざる」の言葉を聞いたことがあると思います。今回、東照宮を訪れて、下記のことを知りました。
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三猿には物語があること
「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿の教え以外にも、8つの教えが物語となり示されているのです。参道側の長押に5面、西側に3面の計8面に、人間の一生が風刺されています。人生を8つのステージに分けてテーマにそった教訓を示しています。
有名な「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿は8つのステージの内、2番目のステージでの教えです。
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第1ステージ 母子
母猿が、子供の将来を見つめている猿。
親は子供の将来が実りあるものであることを祈り、
子供は親に愛されて成長するということ。 - □
第2ステージ 幼年期
有名な「見ざる、聞かざる、言わざる」の教えの猿。
幼年期に、悪いことは見ない、聞かない、言わないで、
奇麗なものだけを見て素直に育つのが良いということ。 - □
第3ステージ 少年期
一人で座っている猿。
一人立ちしていく直前の姿を表しているそうです。 - □
第4ステージ 青年期
大きな志を抱いて、天を仰いでいる猿。
青い雲は「青雲の志」を表しています。 - □
第5ステージ 岐路
挫折を知り、崖を覗き込む猿とその猿を慰める猿。
崖を飛び越えようとする猿。
人生の挫折に悩んでいる姿です。
そんな挫折の時も、側に居てくれる仲間が
大切だという教えだそうです。
仲間とともに成長していく姿が伝わってきます。 - □
第6ステージ 物思い
座り込み、恋愛に悩む猿。
若い猿にも恋の季節がやってきて
物思いにふけっている姿だそうです。 - □
第7ステージ 結婚
結婚して、荒波を超えて行こうとする猿。
目の前には「人生の荒波」が現れますが、
二人で力を合わせれば、
乗り越えられるということだそうです。 - □
第8ステージ 妊娠
妊娠をしたお腹の大きい猿。
次の世代の子供を宿し母となって、
また、物語は第1ステージに戻るのだそうです。
それぞれのステージで、ステージに応じた課題があり、物語があるのです。
私は、上記の三猿の彫刻の説明について団体ツアーのガイドさんの解説を隣で聞きながら知りました。三猿の8つのステージに応じた物語と教え。確かに、人生の要所を突いた見事な教えなのですが、私には、何か大切なことが欠けているような気がしました。それは、下記のことです。
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糧を得ていくための職業のステージの教訓が
示されていないこと
成人となり、糧を得ていくためには、現実と対峙することが必要になります。子供の頃には、「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿の教えで素直で綺麗な心を育みながら、親の愛情の下で安心して育ちます。大人になれば、残酷な現実と対峙する精神性が必要になります。糧を得ていくためには、下記のような行動が大切になります。
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「よく見て、よく聞いて、よく話す」
「よく見て、よく聞いて、よく話す」というのはビジネスの基本中の基本となる大切なことです。上記の大切な教えを伝えている神社が埼玉県にあるそうです。
埼玉県の秩父神社には、「お元気三猿」と呼ばれるユニークな彫刻があるそうです。日光の「三猿」とはまったくの正反対の意味です。現代の情報化社会にふさわしいとして、皆に親しまれているそうです。
何も分からない子供の頃は、「見ざる、言わざる、聞かざる」で、素直な心を育むことが大切です。分別がついた大人になれば、「よく見て、よく聞いて、よく話す」で、現実と対峙して糧を得ていくためのコミュニケーション力が大切です。
どちらの教えも大切なことで、人が成長するためには、順番が大切だということを感じていました。いつか、秩父神社の「お元気三猿」にも逢いに行ってみたいです。
作成日:2017年11月6日 屋根裏の労務士