コラム Column

「裁量労働制(専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制)の自主点検」・・・前編

2月に入ってから、弊社には下記の相談が急増しています。
  • 裁量労働制の自主点検の回答に関する相談

これまでも、度々、労働基準監督署の主導で、裁量労働制の自主点検が管轄ごとに行われていました。また、裁量労働制の適正な運用に関する調査に関しても、度々、臨検で確認されることがありました。

しかし、今回は、厚生労働省の主導による全国一斉の調査です。2月に入り、労働局と労働基準監督署から、同じ形式の自主点検表が送られてきました。それを踏まえて、先週まで、弊社の方にも、連日、自主点検の回答に関する相談が来ていました。

全国展開をしている企業では、北は北海道から南は沖縄まで。全国10か所の事業所に、自主点検を求められたクライアントもありました。今回、労働基準監督署と労働局は、裁量労働制を導入している全国約1万3千の事業所に、自主点検をさせる調査表を送付したそうです。

今回、このような全国規模での自主点検をさせた背景。厚生労働省は、下記の様に説明しています。

  • 裁量労働制を不適切に運用する事業所が多いため
    裁量労働制の理解を醸成させる社会的な必要がある

裁量労働制を巡っては、昨年末に、東証1部上場企業である野村不動産に対して、調査や企画を担う労働者が対象の企画業務型裁量労働制を、営業職の社員に違法に適用していたとして、東京本社や関西支社など全国4拠点に是正勧告がありました。

更に、大手不動産の社長に対して是正を図るように特別指導。労働局が企業名を明かして、裁量労働制の違法な適用について発表するというのは異例の対応です。東京労働局の鈴木伸宏・労働基準部長は記者会見で、特別指導更には企業名を公表に踏み切った理由について、下記の様に説明。

  • 「(同社の不正を)放置することが
    全国的な順法状況に重大な影響を及ぼす」

働き方改革の裁量労働制の拡大について野党の反対を含めた世論の高まり。今後、法改正により裁量労働制の範囲の拡大を踏まえて。明らかな裁量労働制の違法運用に関して、行政は、何か見せしめのように厳しい対応を示したのかもしれません。

現行の企画業務型裁量労働制で、個別営業などの業務を対象に出来ると解釈するのは、いささか無理といわざるをえません。

当社のクライアントは、裁量労働制を導入している企業が多いです。労務のコアとなる労働時間管理に裁量労働制を導入しているのです。もちろん、裁量労働制を適正に導入が出来ています。

弊社のクライアントに裁量労働制が導入されていることが多いのは、高度な専門性を要する技術系のクライアントが多いからです。弊社のクライアントの労働時間管理は次のようになっている傾向があるのです。

  • 技術部門・・・・・・・・・・・・・専門業務型裁量労働制
    間接部門の調査や企画部門・・・・・企画業務型裁量労働制

先んじて、技術部門には、専門業務型裁量労働制を導入。次に、必要に応じて、技術部門とのバランスから技術部門の同等等級の間接部門には、企画業務型裁量労働制を導入させたのです。

労働時間制に裁量労働制が導入されているということ。給与制度にも、裁量労働制を踏まえた制度が導入されており、人事制度や等級制度も、裁量労働制を踏まえた仕組みになっています。

弊社のクライアントは、技術屋さんや専門者が多いので、裁量労働制は企業文化にマッチした馴染みやすい制度だったと思います。

  • 弊社のクライアントの多くに
    裁量労働制が導入されていること

クライアントの業種が裁量労働制の対象業務であり、技術屋さんや専門者の集団だっただけではありません。何より、小生が、下記の社労士だったからです。

  • 裁量労働制が大好き社労士

皆様も、ご存じの通り、小生はマニアかつオタクな性格です。更に相当粘着質な気質です。小生に、楽しさはあっても、爽やかさはありません。徹底的に議論して、理解を深めて制度を消化させ、粘着質につくり込むのが特徴です。

技術屋さんであった皆様のお相手を、小生が対応させて頂いているのは、偶然ではなく必然だったのです。

労務の範囲は広いので専門分野が膨大にありますが労働時間法理に関すること。とりわけ、裁量労働制は、小生がもっとも好きな分野なのです。裁量労働制に関して、熱く、楽しく、いつまでも語ることが出来ます。

裁量労働制のアメトークがあれば、是非、参加したいです。先日も、労働基準監督官と1時間程度、昨年末も労働局の方と2時間程度、裁量労働制について、熱く、楽しく、語り合いました。

弊社のクライアントは、会社の方針や行動指針に、下記の言葉が入っていることが多いのです。

  • 「自律的」に行動すること

裁量労働制に、ぴったりのキーワードです。何より、小生が大好きな行動指針の一つです。『指示待ち』ではなく、自分の頭でやり方や時間配分を考えて、「自律的」に行動できる者を社員像に求めているのです。

先日、社員が一年に一回、全国から一同に集まる全社大会に来賓で参加してきました。社長が内部構造改革方針を説明し、社員の行動指針を打ち出しました。行動指針の最初に下記のキーワードがありました。

  • 自らの役割を認識し、
    自らの責任を果たすため
    「自律的」に行動する

やはり、裁量労働制の考え方を求める企業文化を感じるのです。

小生は、「自由かつ厳しい」社風の企業で、育ち、鍛えられました。サラリーマン時代は、コテコテの技術屋の部長と一緒に仕事をしていました。部長は、技術士で元・建設コンサルタント。小生の仕事の進め方は、今でも、部長から学んだことがベースになっています。

部長からは、いつも、「やっておけ!」という様な「包括的な指示の下」。「心構え」だけを教わりました。具体的なことは、一切、教わらずに、自分の頭で考えて「自律的」仕事に取り組んでいました。

自律的な企業文化で、「包括的な指示」の上司とともに、サラリーマン生活を過ごしました。そのため、私自身が縛られることが好きではありません。また、他の人のことを縛ることも好きではありません。クライアントの社員の方々にも、同じように考えています。

「自律的」に、何より、「自立的」に行動するし行動できるから、自分に自信も出てくるし、ワクワクして楽しくなるのです。『指示待ち』でやり方も労働時間も管理され、縛られて仕事をしていても、ある意味、『楽』かもしれませんが、「楽しく」ないと思うのです。

若かりしときから、日々、「自律的」に仕事をしていた小生。「自立的」に起業をしたことも、また、当然のことなのです。

裁量労働制は、正しく導入され、適正に運用が出来れば、自由で、楽しく、職業生活を送ることが出来て、自己実現の有効な手段になると思うのです。

作成日:2018年2月19日 屋根裏の労務士

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