コラム Column

「裁量労働制(専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制)の自主点検」・・・後編

弊社は、2月は、連日、下記の相談に対応していました。
  • 裁量労働制の自主点検の回答に関する相談

2月は年度末の繁忙期準備の対応に裁量労働制の自主点検の回答に関する相談が加わり、連日、パンク状態になっていました。仕事とは不思議なもので、繁忙期で時間がないときに、新規のプロジェクトの依頼などを頂くものです。

現在、4月の無期転換への駆け込み対応中です。今年も3月は休日をとることが出来そうにありません。桜が咲く4月が待ち遠しいです。

今回の裁量労働制の自主点検。厚生労働省の主導による全国一斉の調査。2月に入り、労働局と労働基準監督署から、同じ形式の自主点検表が送られてきました。

弊社のクライアントは、高度な専門性を要する技術系のクライアントが多いため、労働時間管理に裁量労働制を導入している企業が多いのです。そのため、先月は、連日、裁量労働制の自主点検の回答に関して相談対応をしていました。回答した自主点検の内容を踏まえて、労働局から内容に関して、電話で確認を受けるケースもありました。

しかし、今回の厚生労働省主導の自主点検は、非常に巧みにつくり込まれていることを感じました。恐らく、相当、頭が良い官僚が知恵を回して、自主点検の項目を考えてつくり込んだはずです。これまでの自主点検とはレベルの違いを感じた、素晴らしい内容となっているのです。

中でも、小生がとりわけ素晴らしいと感動したのは下記の点にあります。

  • 自主的に改善を促す仕組みを報告書に取り入れていること

裁量労働制の法律や制度に関して、深い理解が出来ていない者であれば、現行制度を改め期日を決めて自主的に改善を促すような仕組みになっているのです。

労働局の担当官や労働基準監督署の監督官に回答方法を踏まえて、下記のことを何度も確認しました。

  • 法律の義務要件になっていない項目まで、
    期日を決めた「改善の予定」の対象となる報告書になっていること

  • 「本個票を行政目的以外で使用することはありません」
    という説明文章が報告書の冒頭部分にあり、役所が意図していること

法律に抵触する項目は、是正勧告などの行政処分の対象になります。しかし、通達などの内容に抵触している場合、是正勧告などの行政処分の対象にはなりませんが、行政指導の対象になります。つまり、改善を予定せずに、実施しない姿勢であれば、下記のことがあり得るという仕組みになっているのです。

  • 労働局や労働基準監督署から、臨検を受けること

臨検を受ければ、法律に則した正しい対応をしていても、そのことを担当官に説明するために資料を準備して、膨大な時間と手間を割かれることになります。企業側も上記のことは理解しています。そのため、まともな企業であれば、改善を予定・実施する対応を図ることになるのです。

今回の裁量労働制の自主点検の対象企業となったクライアントの方々は、既にご承知のことですが、小生は、自主点検の結果報告書を下記の様に対応しました。

  • 改善の予定項目に関して、用意されたフォーマット以外の回答

役所が用意してきた回答選択肢以外の回答項目を考えて、その回答になった説明を短文で付して自主点検の結果報告書に回答したのです。

お上の方も、法改正など新しい対応をしていくとき、万能の神様ではないので、間違えることは多いものです。机上であれこれを想定しても、現実はイロイロと調整項目や解釈対応、修正対応などが出てくるものなのです。

今回の裁量労働制の自主点検でもお上が想定していなかった不備や説明不足事項がありました。それを差し引いても、今回の厚生労働省主導の自主点検は、精度が高く、すばらしい自主点検の内容だったと思います。

  • 的を射た点検項目の数々

更に、一つ一つの点検項目は簡単に回答出来ても全体で捉えた場合、矛盾や問題点を浮き彫りにさせ、自主的に改善を求める必要があるような仕組なのです。裁量労働制の法理に関して、相当精通した頭が良い人がつくったはずです。

近年、官僚制組織は批判を多く浴びています。消えた年金問題や独法の件などなど。官僚制の弊害も多くあり、呆れる様なことが多いのも事実。官僚を叩く方が受けも良いことは分かっています。それでも、私は、官僚の頭脳や敏腕には、感動することの方が多いのです。

  • 優秀な日本の頭脳は、半端な力ではありません

官僚の方々が作成する文章や法律条文。いわゆる、「霞が関文学」には、毎回毎回、感動する様な美しさを感じるからです。玉虫色にしているのが、「霞が関文学」だと思っている人がいますが、とんでもない間違いです。組織を安定して運営していく適正な制度をつくり、そのために必要な文章を見事に表現して、すばらしい精度で、毎回毎回、策定しているのです。

それでも、法律をベースにした机上では限界があります。そのため、現場で実務に精通している小生の様な立場の者が、お上の方と調整や修正して、動かしていく必要が出てくるのです。

働き方改革関連法案に盛り込む予定だった裁量労働制の拡大は全面削除する方向になりました。裁量労働制の拡大は、まだまだ議論を要する必要があることを感じています。

今回の裁量労働制の全国一斉の自主点検を受けて現行の裁量労働制についても、まだまだ成熟した制度になっておらず、これからも、「霞が関文学」の法令や通達の下、各種調整対応していくことが多いことを感じていました。

作成日:2018年3月5日 屋根裏の労務士

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