「友達を作った方が良いでしょうか?」
これまで、小生は、人事や総務の部長職の方で社労士資格を持っている人をあまり知りません。折角、苦労して、社会保険労務士資格に合格しても、資格の力に頼っているだけでは、事務担当者で社会保険の手続きをしているだけで、終わってしまうということなのでしょう。
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ビジネスに王道はありません
やはり、人の上に立つ人材になるためには様々なビジネススキルを身につけ、しっかりとした考え方を持ち、様々な経験を積む必要があります。
傷ついたり、悔しい思いを重ね、時には心身ともにボロボロになりながら。厳しい現実と対峙して、大切な何かに気がついて、成功経験や失敗体験の修羅場を潜り抜ける経験。必要だということです。
現実の険しい山々の前に、自分の無力を思い知りながら。何度も、どん底まで突き落とされて、そこから這い上がり、成長する必要があるということです。
綺麗に成功体験だけを重ねて、尊敬されて人の上に立っている人はいないと思います。特別ルートがあるような身分の人にも、人知れず、苦労や苦しみ、痛みや悔しい経験があるものです。
資格試験の机上の場で、机上の知識を身につけたぐらいで、人格的に高められることなど無いということです。つまり、社会保険資格をもっているだけの人を、組織は人事・総務の重要ポジションに抜擢しないということです。
人というのは、試験に合格して資格の取得などをすると、得てして何か勘違いをしたり、油断してしまうことが多いものです。社会保険労務士の試験で学んだ知識。社会保険や労働保険の手続きの対応であれば、学んだことがそのまま実務で役に立ちます。
加えて、人事・総務の仕事は求められる市場ニーズがあります。しかし、実務ができる人材は市場にあまり出てきません。そのため、人事・総務の上席者は自社で育成する必要があるのです。
社会保険労務士の資格を持つことは、転職などに有利になることは間違いないでしょう。人が集まり組織が出来る以上、労務の需要がなくなることはありません。AIがいくら発達しても、労務の必要性がなくなることはあり得ないからです。
社会保険労務士の資格があり実務ができる能力が伴えば、就職先に困ることはありません。中小企業では、社長の右腕となる優秀な人事マネージャを求めている優良企業がいくらでもあるからです。求めている需要が多くて、実際に市場に優秀な人材は出てきません。そのため、社会保険労務士の資格があり実務ができる能力が伴えば、ある意味、生涯安泰になります。
弊社のクライアントの人事マネージャは、あまり退職することはありません。退職した方もステップアップの退職となっています。小生との労務の鉄火場を通じて培った経験と自信は、市場で付加価値の高い経験やスキルとして評価されています。
社会保険労務士試験は、毎年8月の最終日曜日。1年に1回しかありません。6月の時期になると、社会保険労務士試験の勉強方法について、下記の方から度々ご相談を受けることがあります。
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今年の8月の試験に向けて追い込みで勉強中の方
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これから来年の8月に向けて勉強を始める方
小生は資格学校の講師は本業にしていません。資格取得の受験動向などは知りません。そのため、毎回、アドバイスすることは下記のことだけです。
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受験機関が用意したカリキュラムをすべて消化すること
毎年、合格者のほとんどは上記の中から出ているはずです。社会保険労務士試験の全国合格率は7%前後です。受験機関を利用した場合、全国合格率の2倍強の15%前後。
上記の数字だけで見れば、難関資格ということになります。しかし、受験機関が用意したカリキュラムをすべて消化して受験に臨む人は、全体の半分もいないと感じています。カリキュラムを完全に消化して試験に臨んだ方であれば、3人から4人に一人ぐらいは合格する資格だと思います。
結局、ほとんどの人が受験機関の用意したカリキュラムを消化することが出来ずに、試験に臨んでいるのが実態なのです。本業の仕事でも立てた目標計画を実際に遂行できる人。一握りの人しかいないと思います。
会社から割り当てられたノルマを完全に達成できる人。社会保険労務士試験の全国合格率と同じように、どの企業でもせいぜい7%前後。良くてその2倍強の15%前後ぐらいではないでしょうか。
6月の時期になり、社会保険労務士試験の勉強方法について、ご相談を受けるのは、下記のことが背景にあるからなのです。
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受験機関が用意したカリキュラムを消化できないこと
「やるべきこと」、「やらなければならないこと」は分かっているのに、それらを『やることが出来ない』と愚痴を言っているのと同義なのです。どんな精神状態に陥ったとしても、結局は、受験機関が用意したカリキュラムを完全に消化することが、合格への最短ルートのはずなのです。
また、下記についても、度々、質問を受けることがあります。
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「勉強友達を作った方が良いでしょうか?」
通常、受験機関や書籍などには、勉強友達を作った方が良いとアドバイスがあるものです。しかし、小生は別の考え方を持っています。
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「勉強友達は作らずに、一人で戦った方が良い」
これまで、サラリーマン時代の前職から、宅建やFPなど様々な資格取得をしてきました。資格勉強を通じて知り合った友達と仲良くなり、定期的に集まっていた時期もありました。
噂ではその集まりは今でも続いているようです。目標に向かって一緒に勉強をして、合格をした仲間と過ごす時間というのは、それはそれで嬉しい時期もあります。
宅建やFPというのは、真面目に勉強すれば合格させるように出来ている試験です。勉強仲間の友達で落ちた人は数名程度でしかいませんでした。一方、社会保険労務士試験は、真面目に勉強したとしても落とすように出来ている試験です。勉強友達の中から合格者は、数名程度しか出ません。
合格発表の日を境にして、合格者と不合格者の間で連絡は途絶えます。つまり、合格発表の日を境にして、もう会わなくなる人、もう会えなくなる人が出るのです。
合格体験記に見かけるような資格試験を通じて知り合って、ハッピーエンドの結末になる展開は、滅多にあることではないのです。現実は下記のような結末なのです。
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勝者と敗者が出て、両者は交流がなくなるということ
合格した後でも友達はたくさん作れます。合格祝賀会や実務講座研修、開業セミナー、勉強会や交流会などなど。合格者には様々な出会いの場が盛りだくさん用意されているからです。また、それはそれで楽しい時期もあります。
注意して頂きたいのは、その大半は何もわからない素人の社労士を相手にして、ひよこ食いの商売をしているブラック社労士やブラックな業者が胴元です。
そして、合格後に知り合って、楽しい時間を過ごした社労士の友達とも、毎年毎年、連絡は途絶えていきます。以前、名刺を整理していたときに、合格後に名刺交換をした人を検索したことがあります。当時、100枚以上名刺交換をしました。今でも事業が継続している人は私を含めて4人だけです。
そのうち、2人は定年退職後に年金を受給しながら老後の趣味やボランティアで社労士の開業をしている人。もう一人は、表の顔は社労士ですが、本業は保険代理店。今でも助成金の申請商売から抜けられないそうです。
何とも無常で残酷なのですが、社労士合格後に知り合った友達とも10年も経過すれば、その関係は自然消滅。交流は無くなってしまうのが現実なのです。お互いが成功して友情が育み、ハッピーエンドになる展開は、滅多にあることではないのです。
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勝者と敗者が出て、両者は交流がなくなるということ
廃業した人とは気まずい雰囲気となり、連絡は途絶えていきます。また、事業が継続していても、社労士のキャリアやステージに応じて、話は噛み合わなくなり、連絡は途絶えていくものなのです。
起業での成功だけが自己実現ではありません。企業内で活躍する社労士には、起業とはまた別の喜びや成長があるからです。尊敬する社労士には企業内で活躍する人もいます。人生イロイロです。生きる道もイロイロです。
勉強友達をどのように捉えるのかにもよりますが、下記のことを理解しておいた方が良いでしょう。
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「入口はみんな同じでも、出口はそれぞれ別」
私は、勉強友達はつくらずに、一人で資格試験を戦った方が良いという理由に下記があります。
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「孤独力を鍛える訓練」
周囲と協調して仲良くすることが大切な様に、実は、一人で孤独でいることも大切なことであり、ビジネスの成功の条件なのです。
理科系の方は研究者が多いので、孤独力が備わっている人が多い傾向があります。悪く言えばオタク的であり、よく言えば専門的なのです。
一方、文科系の方は周囲との協調やコミュニケーション能力は高い傾向にありますが、概して、孤独力が備わっていないのです。よく言えば、社交的であり、悪く言えば個性がないのです。
社会保険労務士試験は概して文科系の方が受験する傾向の資格試験です。みんなで繋がって勉強していても、結局、最後の試験のときは孤独に一人で戦うことになります。それに、1年間ぐらい孤独に自分と向かい合って、目標に向かって戦うことも必要な経験です。
孤独があるから、人と繋がる大切さ、他者を尊重する重要性。わかる瞬間もあるような気がしています。孤独力というのは大切なビジネスのスキルのはずです。それに、経営者は孤独なのが当たり前だと思うのです。
作成日:2018年6月18日 屋根裏の労務士