「鹿児島の旅」・・・後編
8月の夏休み中は、溜まっている仕事をまとめて処理しています。来年度の4月の導入に向けて、新しく仕事を頂いたプロジェクトの用意もあります。
ほとんどのクライアントが長期の休暇に入り、時間が止まった様な状態になるので、仕事がはかどるのです。それでも、来年からは何とか8月にも、長期休暇を取得できるようにするつもりです。
8月には長期の休暇はありませんが、7月の3連休は日常を離れて鹿児島に旅をしてきました。今回の鹿児島の旅は、鹿児島市街地と桜島、そして、今回の旅のメインであり、ハイライトは下記です。
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知覧
知覧は人口1万4千人程度の小さな町です。観光としては、武家屋敷が残っています。「薩摩の小京都」と呼ばれています。そして、何より下記のある場所です。
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知覧特攻平和会館
私は、かねてから、知覧に訪れたいと思っていました。色々と勉強したうえで、自分なりに理解を深めた時点で、知覧に足を運び、「英霊の言の葉」を一つ一つ確認したいと思っていたのです。
太平洋戦争末期の沖縄戦において、特攻という人類史上類のない作戦。爆装した飛行機もろとも敵艦に体当たり攻撃をした陸軍特別攻撃隊員。
知覧特攻平和会館には隊員の遺影、遺品、記録等貴重な資料を収集・保存・展示してあります。当時の真情を後世に伝えて、命の尊さと平和のありがたさを訴え、世界恒久の平和に寄与するため、資料館がつくられたそうです。
特攻作戦で亡くなった隊員は1,036名。そのうちの半数近くの439名が知覧から飛び立ったのです。当時、日本政府は沖縄を本土の最前線と考えていました。その最前線を守るためにとられたのが、特攻です。
圧倒的な物的戦闘力のアメリカの侵攻。それを阻止するためには、もはや、捨て身の方法しか他に手段がないという結論に達したのです。その捨て身の方法が下記です。
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兵士ひとりひとりの『精神力』による特攻作戦
特攻作戦でアメリカ軍にも大きな被害を与えて、アメリカ軍に戦争の嫌気を起こさせ、停戦させることを考えたのです。たとえ、日本が降伏する戦争の結末であっても、アメリカ軍に最後の一撃を与えて、日本が少しでも有利な形で、戦争を終わりにするために、特攻作戦がとられたのです。
兵士ひとりひとりの『精神力』に頼る作戦。それが、特攻です。何事でも、「精神力」というのは、最も大切な核となる部分です。しかし、いつも『精神力』を語り、策を講じることしか出来ない指揮官。今の時代だけでなく、どの時代でも、求められていません。
特攻隊員は、知識も技術も必要とされた「エリート」です。「ノブリス・オブリージュ」という言葉があります。ヨーロッパではよく使われる言葉です。下記のような意味です。
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「高貴な人の義務」
特に、騎士道精神のあるイギリスでは、「ノブリス・オブリージュ」という考えが浸透しており、いざ、戦争が起きれば、貴族の子弟が戦争に志願したのです。
真の「エリート」というのは、いざとなれば、国民のために、自分の大切な命を賭すまでの覚悟があるのです。上っ面の『義務と責任』ではなく、「使命と感謝」の気持ちを持っているのです。自分の命を賭する覚悟がないような人に、上に立ってもらいたくありません。
特攻は「志願」という名の「命令」ですが、英霊たちは、日本の未来に希望を託して、何より愛する家族のために、学徒出陣をして日本の防波堤となってくれたのです。
知覧特攻平和会館には、日本の防波堤となってくれた若者の遺影と遺書が展示されています。
まず、遺影についての感想です。表現するのがとても難しいのですが、みんな「良い顔」をしているのです。
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「覚悟を決めた精悍な顔」
とても二十歳前後の若者には見えないのです。表情というか、顔つきに、幼さが微塵もないのです。
次に、遺書についての感想です。遺書の内容については、ご存じの方も多いと思います。これも表現するのがとても難しいのですが、一言でいえば、下記のような感想です。
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「精神が成熟している」
文章が見事というのを超えているのです。精神が成熟して。心が成熟して。魂が成熟しているのです。
とても、二十歳前後の若者が残した文章に思えないのです。知覧に来た最初の時期は長文の手紙や遺書が多いです。しかし、特攻の前日の遺書は短文の遺書になっています。
最後の最後に、自分の想いをすべて詰め込んで、伝える境地に至ることが出来たような気がします。短い言葉でないと自分で自分を支えることが出来なかったような気がしています。
知覧特攻平和会館を訪れる多くの人。
涙を流しながら、ハンカチで涙を拭きながら。
時代の過ちを振り返りながら。
感謝と尊敬の気持ちに包まれています。
今回、私も、4時間近い時間をかけて資料の一つ一つを、涙を流しながら、心を揺さぶられながら、確認してきました。私は感謝や尊敬の気持ちを頂く一方で、実は、現実に覚醒しているところもあり、冷めた人間という一面もあります。
注意しなくてはいけないのは、下記のことです。
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感動したからと言って、心が震えたからと言って、
それが正しいとは限らないということ
戦争について語ること。特に、特攻について語ること。何より、平和について語るということ。どれもすべて難しいことです。自分の理解が深まり、今より精神が成熟したら、また、いつか知覧には訪れるつもりです。
作成日:2018年7月30日 屋根裏の労務士