コラム Column

「駆け出しの頃にやる仕事」

通常、弊社は9月から10月は大繁忙期ではありません。今年は、9月から10月の先週まで大繁忙期のパンク状態でした。コンサルティング業務の納品や説明会が続いてことに加えて、今年は下記の対応があったからです。
  • 派遣業務の切替申請の対応

3年前の派遣法の改正により、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣法の区別は廃止されました。すべての派遣事業は、新たな許可基準に基づく許可制になったのです。

派遣法の改正の背景には、派遣法が複雑でわかりにくい制度になっていたことがあります。実務では特定派遣と一般派遣の業務の区分について、判別が難しいケースも多くありました。行政の方でも判断をしていくのが難しく、わかりにくい制度になっていたのです。

派遣法や偽装請負の対応などの法理。現行でも複雑な制度になっています。弊社のクライアントは、労務相談を中心として小生の下記の専門分野について評価を頂いて顧問になって頂いているケースが多いです。

  • 労働時間法理と賃金制度

また、派遣法や偽装請負に関してのご相談から、顧問が開始になったクライアントも少なくありません。派遣法や偽装請負は、労働基準監督署の対応ではなく労働局が管轄している内容ということもあります。

派遣法や偽装請負に関しても、世の中に専門者が少ないこともあり、クライアントから弊社が高く評価をされている分野です。

特定労働者派遣は経過措置として、平成30年9月29日までは、営むことが可能になっていました。実務上では、9月29日までに許可制への切替申請について労働局に受理されていれば、許可が出るまでは特定派遣が続けることが出来ます。

行政の方でも、期限が迫ってきたので、度々、特定派遣から許可制への切替をするように呼びかけをしていました。

派遣業務の申請業務代行業者には、切替申請バブルの状態になっていたのです。派遣業務の申請に関して、実は、小生も社労士の駆け出しの頃に、散々、対応した仕事です。社労士は、駆け出しの頃は、下記の業務をして活動をしていくのです。

  • 『助成金の申請業務』

  • 『労働者派遣の申請業務』

他にやりたい仕事があったとしても、『助成金の申請業務』と『労働者派遣の申請業務』が出来なければ、次のステージの扉が開かないのです。

開業当初の頃は、顧問もありません。社労士の試験に合格した程度のスキル。正直、社会保険と労働保険の手続きをこなす程度のレベルしかないのです。

日常的な社会保険の手続き程度であれば、社労士がいなくても、時間をかければ、事務員でも対応が出来ます。複雑で手間な申請になる『助成金の申請業務』と『労働者派遣の申請業務』であれば、ベテランの社労士はやりたがりません。

そのため、駆け出しの社労士が比較的に簡単に仕事を受注することが出来るのです。クライアントも少なく、時間だけはある時期です。複雑で手間な申請に対応が出来る時期でもあります。どんな業種でも、「駆け出しの頃にやる仕事」というのはあるのです。

また、別の捉え方をすれば、『助成金の申請業務』や『労働者派遣の申請業務』も受注ができないようであれば、他の仕事の依頼などは無いということです。

『助成金の申請業務』と『労働者派遣の申請業務』は、社労士開業の登竜門ともいえる仕事なのです。そして、社労士を開業した者のほとんどが、『助成金の申請業務』と『労働者派遣の申請業務』に懲り懲りして社労士業務が嫌になり、現実の厳しさを突き付けられて廃業をしていくのです。

小生も、駆け出しの頃は、異業種交流会や仕業の交流会などに参加していました。交流会で紹介される仕事。ほとんどが『助成金の申請業務』です。そして、助成金を通じて紹介された企業。ほとんどの企業は廃業をしているのです。

厚生労働省管轄の助成金。会社都合で退職者を出すと支給停止になる助成金が多いのが実情。一定の企業規模になれば、会社都合退職を出すケースも出てくるため、助成金は支給されません。

厚生労働省管轄の助成金。駆け出しの時期の企業が受給するものであり、駆け出しの時期の社労士が対応する仕事だと痛感したのです。

私も、駆け出しの頃、『助成金の申請業務』と『労働者派遣の申請業務』を、散々、やってきました。実際に散々やってきたから、この申請業務の勘所や難しさについて、骨身にしみてわかっています。何より、この申請業務がなぜ危険なのかについて、よく分かっているのです。

弊社のクライアントは、それなりの企業規模があります。現在は、助成金の申請や派遣法の申請に関して申請がある場合でも、弊社の方では、申請に伴う就業規則の変更しか対応していません。

弊社のクライアントは、IT業や建設コンサルタント業も多いので、労働者派遣を行っているクライアントが比較的にたくさんあります。ほとんどのクライアントは、自社で切替申請を完了させていました。それでも、ぽつりぽつりと切替申請について依頼がありました。

4月から5月の時期に2件、申請依頼を頂き、派遣の切替申請を完了させました。1件はスピード処理して完了させ、もう1社は9月になり完了となりました。

実は、8月の上旬に3社の企業から切替申請の依頼を頂きました。1社は新規の企業から、2社は顧問先のクライアントからです。しかし、今回は3社とも丁重に辞退をさせて頂きました。理由は下記です。

  • 切替申請は、時間をかければ、
    社内でも対応が出来る仕事。

  • 現在はパンク状態の繁忙状態。

  • 万が一に受理されない事態になった場合
    この企業は派遣業務が出来なくなり、
    入札や受注が出来ない状態になり
    責任問題になり得る。

折角、ご依頼を頂いたのに、後ろ髪を引かれる気持ちもありました。しかし、既に、現在受けている仕事の納品や説明会があり、臨検の対応などもかかえていました。時間が無くなり、期日に余裕が無くなると、綱渡りの状況になります。物理的にも精神的にも追い込まれての対応になります。

クライアントのことを優先に考えた場合、自社で対応して頂いた方が良いこともあるのです。申請に伴う就業規則の変更や労働基準監督署への届け出だけは、弊社の方でスピード処理をして対応させて頂きました。

色々ないきさつがありましたが、結局、クライアントの2社については、9月に入り小生の方が切替申請の対応をさせて頂くことになりました。クライアントは本業が忙しいため、『労働者派遣の申請業務』を専門に対応している業者に依頼をしたそうです。

『労働者派遣の切替申請業務』について申請代行の業者からの売り込みのDMも、頻繁にクライアントに届いていたそうです。

申請代行の業者の2社は別の業者でした。2社ともきちんと対応をしてくれないというのです。1社は、クライアントの方から、指示を出さないと動いてくれないという状態。もう1社は、やりとりに膨大な電話がかかってきて仕事にならない状態。

何度も何度も同じことを確認されるし、質問したこともきちんと調べて報告をしてこないというのです。1か月程度のやりとりでしたが、下記のような状態だというのです。

  • 「言った」、「言わない」
    「聞いている」、「聞いていない」

更に、仕事のやり方や進め方も、業者に申請書類を出すのと、自分たちで労働局に申請書類を出すのと、大差ないような進め方であり内容だというのです。

9月に入っても、申請が進んでおらず、万一受理されない事態になった場合、大変なことになってしまうため、再度、小生の方に依頼があったのです。

ネットで2社の業者を検索したら、下記のような売り込みをしていました。

  • 100%の申請成功の実績

『労働者派遣の申請業務』というのは、受理されるまでが大変で、受理されたら不受理になるようなことは滅多にないのです。

恐らく、切替申請バブルで期間雇用されて雇われた、仕事が出来ない人が対応をしたのでしょう。スポットでの対応だし、手付を払って頂いたら、期日に間に合わなく派遣業務が出来ない状態になったとしても、どうなろうが自分たちには関係ないということでしょう。

本業に関係がない助成金の申請ならともかく、本業の活動に影響を与える労働者派遣の申請を何ら責任も感じないで、いい加減な気持ちで仕事を引き受けることに呆れていました。

  • 時間があるときであれば、簡単な仕事でも
    期日が迫り時間が無くなれば、
    難しい仕事になってしまうものです。

仕事というのは、時間という制約の中で対応するものだということだと改めて理解を深めました。何より、追い込まれた時間との格闘になった場合、心身ともにすり減ってしまうということも理解しました。

ちなみに、労働局の窓口の方も、複雑な申請業務であるにも関わらず、臨時に雇われた職員で対応している状況なのです。

派遣法の理解の浅さや確認してくる内容に違和感があったので、確認をしたら、駆け込み申請で労働局の対応が追い付かないため、非正規の方を臨時で雇い対応しているというのです。

申請する業者も駆け出しや非正規社員が多いし、行政の方も窓口でも非正規社員で対応している様です。分からない者同士が対応しているわけですから、何かとトラブルが多いということも、分かったような気がします。

作成日:2018年10月29日 屋根裏の労務士

お問い合わせ

電話番号 03-3988-1771 受付時間9:00~19:00(土日祝祭日を除く)

お問い合わせ

コラム

  • 採用情報