コラム Column

コロナの対応 その10 「雇用調整助成金 その2」

コロナの対応について、労働者の生活保障での特例で下記のフレーズが一人歩きしています。
  • 雇用調整助成金の助成率90%支給

テレビの討論番組の有識者までが下記のように説明している状況です。

  • 雇用調整助成金は
    周知が十分になされていないために
    利用されていない。

  • 今回は、休業手当の90%を補償するので
    経営者は休業手当を100%支給して下さい。

私がコメントを参考にさせて頂いている有識者の人までが上記のようなことを説明しています。社会的に影響力がある人の発言。間違っていても、信じてしまうことが多いのです。そのうち、下記のような雰囲気になってしまうのです。

  • 『あの大手企業でも助成金が支給された。』
    『90%が支給された。』

私は、下記のことを断言します。

  • 「テレビに出てくる有識者の方々は、
     雇用調整助成金を申請したことがない!」

実際に申請したことがない人が、分かっているような雰囲気で、説明しているだけです。

  • 雇用調整助成金には、
    給付額に上限があるのです。

上限があることを知ってはいても自分が受給するわけではないので、突き詰めて深く考えていないのです。下記が上限の金額です。

  • 日額8,330円

上記の日額を8時間割れば、1時間あたり1,041円までが上限です。東京都の最低賃金が1,013円。最高額でも最低賃金プラス28円程度。22日稼働の月額にした場合、183,260円になります。40万円の月給の方であれば半分以上が会社の持ち出しになるのです。

係数に係数をかける制度設計は、官僚の巧みな騙しの技術です。いくつも係数をかければ、複雑になり、簡単には理解ができないのです。

年金制度も同様の制度です。係数に係数をかけたり、経過措置対応で、個別になるように制度設計してあるのです。もっとも、官僚からしたら、当たり前なのかもしれません。

現実的には、最低賃金プラスアルファ―の初任給程度までしか助成金は支給されません。その助成金を支給するだけでも複雑な対応をして、申請コストが発生するのです。

今回、だいぶ、緩和されましたが、それでも複雑な申請です。高額な給付金になりますので、要注意をして対応にあたる必要があります。

教育訓練の加算についても、複雑かつ個別的な内容で要注意が必要になります。恐らく、申請期間中でも教育訓練の対象について運用や取り扱いが変わってくると思います。

上記も助成金の対応の難しさの一つです。厳格に確立された制度ではなく、申請をしながら、運用や取り扱いが変わってくるのです。

制度の方が止まっている状況ではなく、動いている中で対応をしていくのです。制度も、役所も、申請者も下記の対応になるのです。

  • 制度を追いかけて、走りながらの対応

給付や助成金に関する制度は基本的な基本手当の対応でも、職業安定所の所長判断となっていることが多く、厚生労働省の方でも完全に机上の法律でルール化できないのです。

助成金の申請方法の鉄則は下記です。

  • 出来そうな担当者を見つけたら
    同じ人を追いかけて申請を通していくこと

上記のような助成金の対応も、今回はかなりの企業が申請するため、難しくなってきています。更に、ハローワークの窓口が3密の危険な場所になっている状況。

これまでも、度々、雇用調整助成金についてご説明してきました。微妙な判断を要していき、大人の対応を要することが多いのです。法改正の多い近年の労務の傾向です。正解は用意されていません。

  • 制度を追いかけて、大人の判断をしていく対応

雇用調整助成金を申請していく場合、絶対に事務員に丸投げをさせないで下さい。
経営者は、責任のある人に対応にあたらせて下さい。

そもそも、休業手当を支給して、休業状態にさせていなければ、この助成金は支給されないことが大前提です。

作成日:2020年4月20日 屋根裏の労務士

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