コロナの対応 その14 「平均賃金 その1」
そのため、昨日のメールでご説明した通り労働基準法で定める平均賃金を使って、60%以上の支給をしていく必要があります。雇用調整助成金のガイドブックでも支給要件6つの項目のうち1つとして下記のように説明がされています。
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休業期間中の休業手当の額が、労働基準法第26条の規定(平均6割以上)に違反していないものであること。
現時点では、今回のコロナの対応で、リーマンショックのときと比べて弊社のクライアントは、解雇や雇止めをしていません。昨今の人手不足の求人難。そのために投じた採用コスト。解雇を出さない場合の助成率の加算。
休業手当を計算していくためには下記の概念について、理解を深める必要があります。
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平均賃金
平均賃金の詳細の説明は連載コラムで説明していますので、概要および説明は省かせて頂きます。平均賃金を理解するうえで下記のことを頭に入れて下さい。
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平均賃金は「1日単位の賃金の概念」であること
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平均賃金に「1時間あたりの賃金の概念はない」こと
パートやアルバイトなどのフルタイムではなく、労働日数が少なく、労働時間が短い労働者、またはシフト勤務の労働者に関して、休業手当を支給する際に、下記のように対応していることを見受けます。
<多く見受ける対応例>
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『シフトなどで勤務する予定での所定労働時間分について
60%から100%の率を定めて支給する対応』 - □
『時間単価や日給単価で
60%から100%の率を定めて支給する対応』
結果として、上記のような対応で、労働基準法が定める休業手当の金額を満たす場合もあり得ますが、満たさない場合の方が多いと推測します。
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平均賃金は、「過去に勤務した3カ月前」の
賃金と歴日数(勤務日数)を使って算出されます。
原則として、「過去3か月分の勤務実績と賃金実績」により、「基準となる1日あたりの賃金額」を取り決めて、契約に基づいた、未来の勤務予定に対して、休業した日について支給していく考え方です。
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「基準となる1日あたりの賃金額」
となる賃金額はありますが
「基準となる1時間あたりの賃金額」
となる賃金額は無いのです。
上記の考え方の結論について役所の資料でも明確に記載されて説明されていません。平均賃金と休業手当について全体の取り扱いの中で、結果として、認識する当然の内容になります。
例えば、4月のシフトの中で出勤日が8時間の日でも、4時間の日でも、2時間の日でも、それぞれの出勤日で勤務時間が違っても、「基準となる1日あたりの賃金額」は同じになるのです。平均賃金は、原則として、「過去3か月分の勤務実績と賃金実績」により、「基準となる1日あたりの賃金額」を取り決めるためです。
4月の勤務シフトは決まっていても5月の勤務シフトは、まだ、決まっていないこともあると思います。その場合、契約で取り決められた出勤日数について休業手当が支給されることになります。休業手当は、下記のように説明が出来ます。
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「過去3か月分の勤務実績と賃金実績」により
「基準となる1日あたりの賃金額」を平均賃金として取り決めて、
契約で取り決められた出勤日数について支給される。
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平均賃金(1日の単価) × 60%「以上」 × 出勤日数(未来)
上記の小生の説明に関して、労働基準法の条文に則して確認します。
<労働基準法第26条 休業手当>
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平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3カ月間に
その労働者に対し支払われた当該賃金の総額を、
その期間の「総日数」で除した金額をいいます。
<労働基準法第12条 平均賃金(最低保障)>
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賃金の一部または全部が日給制、時間給制又は出来高制の場合は、
平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3カ月間に
その労働者に対し支払われた当該賃金の総額を、
その期間の「労働日数」で除した金額の60%が最低保障となります。
3カ月間に遡り、2つの計算方法で計算して、金額の高い方が平均賃金となるのです。
<多く見受ける対応例>
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『シフトなどで勤務する予定での所定労働時間分について
60%から100%の率を定めて支給する対応』
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『時間単価や日給単価で
60%から100%の率を定めて支給する対応』
社内判断で上記のように対応をした場合、結果として、労働基準法第26条で定める休業手当の金額を満たすこともあり得ますが、満たさないこともあり得えます。
60%ではなく100%での対応であれば労働基準法第26条で定める休業手当の金額を満たす確率が高いですが、60%の場合は、満たさないケースの方が多いのではないかと推測します。
コロナの緊急メールで、賃金は100%補償する方針でとりあえず、避難をする対応を呼び掛けたのは、理由があったのです。雇用調整助成金はハローワーク管轄です。ハローワークの担当者は、労働基準法の内容について深く精通していません。
担当者によって、理解度はバラバラです。ハローワークで受理されても最終的に審査をするのは、労働局になります。雇用調整助成金を申請していくうえで、下記は大前提となる要件です。
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休業期間中の休業手当の額が、
労働基準法第26条の規定(平均6割以上)に
違反していないものであること。
労災の休業補償給付を申請するときでも、申請されてきた平均賃金でスルーされてしまうことも多いのです。また、細かい論点であるため、監督官も疑うような姿勢ではなく、出された資料を善意で解釈して、出された資料の前提の下で判断をして、あまり指摘をしてこないのです。
助成金に関しては、疑うような姿勢で対応してくることが多い傾向にあります。一貫性のない内容については不支給になりやすく、証明に証明が求められる展開になりやすいのです。
そもそも、厚生労働省管轄の高額な助成金は、ポーズだけのことが多く積極的に支給するつもりがないことが多いのです。相手が支給するつもりがないのであれば、法的な細かい論点を持ち出してきて追い返すことなどは、いくらでも出来るのです。
そもそもの制度を複雑にしておけば、現実は、綺麗になっていないのですから、法や制度が求めるようには出来ないのです。机上の正論に、いいがかり。いくらでもできるのです。払うつもりがない人に対して、支払わせるのは難しいものです。払ってくれる前提にして頂ければ、手間ですが支給されるはずです。
申請業者の方も、騙すつもりはなくても、結果として、手付金が入金されたらそれで善しということが多いのが、助成金ビジネスなのです。申請業者の立場でも、成功報酬で助成金が入金されても依頼者が適正に支払ってくれるか否かも分かりません。
入金されなかったと言われれば、それまでなのです。また、初回が膨大な作業になりますが、2回目以降は、レールが出来たので自社でやりますということも珍しくありません。不正をするつもりは無くても結果として、不正に関与するように巻き込まれて、トラブルになりやすいのです。
今回の助成金では、スルーされるか否かは定かではありません。しかし、法に定めていない対応であれば指摘をうければ、不支給になってしまうでしょう。
いずれにしても、休業手当については、平均賃金を理解して法の定めに基づいて適正に対応しておく必要があります。休業手当だけで論点が満載。まだ、休業手当のご案内のメールが続く予定です。この助成金は50年前からあるそうですが50年前からあまり利用されていないそうです。
作成日:2020年4月24日 屋根裏の労務士