コロナの対応 その16 「平均賃金 その3」
新入社員を採用して出勤させずに休業させた場合の平均賃金の処理方法について、下記の通達で処理して下さい。通達は、簡単に確認して読み流す程度で大丈夫です。その後の小生の解説を確認して下さい。
<1 新入社員で1日も出勤せずに休業させた者>
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(昭和二二年九月一三日)
(発基第一七号)
(都道府県労働基準局長あて労働次官通達)
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施行規則第四条に規定する場合における
平均賃金決定基準は次によること。
施行規則第四条前段の場合は、
法第一二条第三項第一号乃至第三号の期間の最初の日を以て、
平均賃金を算定すべき事由の発生した日とみなすこと。
前項各号の期間が長期にわたったため、
その期間中に当該事業場において、
賃金水準の変動が行はれた場合には、
平均賃金を算定すべき事由の発生した日に
当該事業場において同一業務に従事した
労働者の一人平均の賃金額により、
これを推算すること。
雇い入れの日に平均賃金を算定すべき事由が発生した場合には、
当該労働者に対し一定額の賃金が予め定められている場合には、
その額により推算し、しからざる場合には、
その日に、当該事業場において、
同一業務に従事した労働者の
一人平均の賃金額により推算すること。
上記の通達をご解説致します。
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4月1日入社の者を1日も出勤せずに
休業命令を出して休業手当を支給する場合、
平均賃金の算出に必要な3カ月分の期間と3カ月分の賃金について
下記のように「仮定の場合だったとして」計算して
みなすという対応になります。
仮に、1月から3月までの期間で入社して
欠勤せずに出勤した場合だった仮定をして
期間と賃金を計算して平均賃金を算出し、
その仮定の額を平均賃金とみなすという対応です。
<2 新入社員で休業させた者>
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平均賃金の算定期間が
一賃金算定期間に満たないときの
いわゆる完全月給者の平均賃金は、
月給を30で除した金額が平均賃金となる
(昭和45.05.14基発(旧労働省労働基準局長名通達)第375号)。
月給を30で割り、出勤予定日について
平均賃金を出す計算以上が休業手当になります。
しかし、通達で「完全月給者」として
あえて「完全」と定義しているため
現実的には、兼務役員などでない場合以外は
欠勤したら控除することが多いため
通常の労働者には適用できないと解釈します。
前回のメールとの重複になりますが、下記の対応についても、再度、取り上げます。
<3 雇入れ後3か月に満たない場合>
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雇入れ後3か月未満の労働者の
平均賃金を算定すべき事由が発生した場合は、
「雇入れ後の期間」と「その期間中の賃金」とで
平均賃金を算出する。
上記の具体例として、入社して2カ月半などの場合では、賃金の締め日が2回であれば、2回の賃金支給日について、期間とその期間の計算するのです。1回であれば、1回です。労働基準法第12条第2項に下記の定めがあります。
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前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、
直前の賃金締切日から起算する。
3カ月期間がある場合での基本的な対応ケースですが、2カ月半のケースや1カ月半のケースでも同じ解釈で対応をして、問題がないと判断します。
<4 算定期間が2週間未満の者>
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平均賃金の算定期間が2週間未満の労働者であって、
①満稼動の者は、当該労働者に対して
支払われた賃金の総額を
その期間の総暦日数で除した金額に
7分の6を乗じた金額
②通常の労働者と著しく異なる労働に対する
賃金額となる労働者は、
通常の労働に対する賃金額に
修正した金額が平均賃金となる
(昭和45.05.14基発(旧労働省労働基準局長名通達)第375号)。
<5 定年で再雇用された者>
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定年退職後再雇用され再雇用後
3か月に満たない労働者の平均賃金は、
退職前の期間をも通算して算定する
(昭和45.01.22基収(旧労働省労働基準局長が疑義に応えて発する通達)第4464号)。
上記の平均賃金の取り扱いに関して、管轄の監督署の監督官でも応の案内が異なっているのが実情です。今回のご案内の対応に関しては、小生と労働局の精通した担当者とで二人で同じ専門書をつかって確認しながら、1時間近く解釈について確認した判断対応です。
今後、雇用調整助成金を申請が始まる中で、そもそもの平均賃金の計算方法がまとまった形で出てきたらその内容で対応することになります。現状では、マスコミも雇用調整助成金について断片的な内容でしか報じていません。
ちなみに、小生は、厚生労働省にレビューをしていません。労働局の方から厚生労働省にレビューをしてくれるかもしれません。かなり親身になってくれる方でしたので、そもそもの平均賃金の計算自体について現状の問題点についてレビューをして特例を出すように提案してくれるかもしれません。
また、上記は通達ですので、上記の取り扱いでなくとも直ちに法律違反にはならないはずです。指導はされることはあっても是正勧告にはならないはずです。役所の統一回答というのが通達の考え方です。そもそも、通達には、外部に周知されている外部通達と外部には出されていない内部通達があるのです。
平均賃金に連動した雇用調整助成金の対応でも、リーマンショックのときは基本的な対応要件を満たしていれば特段、問題にはなりませんでした。助成金の申請では労使協定を締結して対応しているわけですので、推奨された形での対応を満たしていれば、問題にはなっていません。
そもそも、ハローワークの方々は管轄が異なるため、労働基準法のことに精通していません。審査の最終は、上位機関である労働局になります。
現行でもハローワークの求人募集は裁量労働制や管理監督者の求人記載について労働基準法を適正に理解が出来ていない対応がハローワークの対応ルールになっています。
昨今の働き方改革で、裁量労働制や管理監督者の世論を受けて、急遽、議員からの内部通達の取り扱いで対応した取り扱いが、今でもスタンダードなルールになってしまっているような状態です。
自粛要請業種の雇用調整助成金については再度、5月上旬をめどに特例措置が出てくる見込みです。通常の正社員の平均賃金も手間な対応ですが、助成金の申請を検討している場合、基本的な取り扱いだけは確認をしておいた方が良いでしょう。
現実的な対応として給与計算は、「間違えがあることがある」わけです。最終的な休業手当の金額が下回っていた場合、翌月で、過誤払いについて修正対応をすれば良いのです。在職老齢年金の計算などは年金の支給計算について、役所の方も過誤払いでの修正対応が多いのが実情でありそのこと自体が法律になっているのです。
細かい対応よりも、基本的な内容での対応が重要かつ大切な対応です。
作成日:2020年4月29日 屋根裏の労務士