『分かっている』と思わないようにすること
一方、新型コロナウイルスの感染者数は、冬場を迎えて急速に増えています。新型コロナウイルスには未知の分野のため諸説があります。夏の暑い時期、新型コロナウイルスの生存時間は2.5時間。冬になり乾燥すると、10時間以上と言われています。インフルエンザに比べて格段に感染力の強いウイルスです。
再度、基本的な感染対策に立ち返ることが必要です。どうしても、慣れてくると緊張感は無くなってしまうものです。実は、労務の問題も、「初回の対応」よりも、『慣れてきた3回目ぐらいの対応』が、重篤な展開になりやすい傾向があります。
初めてのときは、「自分は分かっていない」と思っています。そのため、緊張感の意識の糸が切れることがないのです。一方で、経験を積んでくると得てして下記の気持ちになってしまうのです。
- □
『自分は、既に、そのことを分かっている。』
- □
『分かっています!』
『分かっています!』という人が重篤なトラブルを起こしたり、誤魔化し隠蔽体質になるのはどんな分野でも共通です。
日本は、第1波、第2波とも、収束させることに成功しています。これまでは医療崩壊が起きる最悪の事態を回避が出来ました。第3波は、冬の気候的な問題があることは当然の前提になると思います。
毎年、インフルエンザウイルスも、1月から2月に流行のピークになります。政府が対策をしたとしても、コロナも同様に1月から2月がピークになる可能性が高いはずです。
気候的な要因が大きいですが、第3波の拡大した原因を手探りで分析していく必要があります。
9月の下旬、すでに専門家は「感染拡大に警戒が必要」としていました。拡大した要因は、冬の季節的な特徴はあると思いまいますが、それ以外の原因を確認して、意識して行動変容していく必要があるはずです。
第3波の原因に関して、専門家は下記をあげています。
【第3波の原因】
- □
「コロナ疲れ」で、ひとりひとりの対策が少しずつ緩んできたこと、
- □
「GO TO トラベル」で人の移動が増えたこと、
- □
冬の寒さと乾燥で、室内の十分な換気がしにくくなったり、
飛沫が飛びやすくなったりしたこと。
上記のことを、連日、専門家からの意見として報道がされていますが、正直、下記のような気持ちになっております。
- □
『分かっています!』
自分が『分かっています!』と思ってしまったとき。そこで、トラブルや事故が起きてしまう展開になるときです。『分かっています!』と思っているときは、緊張感がなくなってしまっているときなのです。『分かっています!』と思っているとき、下記のことをするときのはずです。
- □
自分で一時情報を掴んで
自分の頭をフル回転させて、
自分を戒めていく必要があるときのはずです。
「第3波」は、クラスターが多様化しています。感染集団のクラスターが多様化しているのです。「第2波」とも呼ばれる、7月から8月にかけての感染拡大の時は、東京の接待を伴う飲食店を中心に感染が広がり、クラスターもそうした人たちの関係者の間で多く発生しました。
しかし、今回は、接待を伴う飲食店だけではありません。高齢者施設、飲食店、職場など、様々なところでクラスターが発生し、家庭も感染拡大の場になっています。
年齢層が「第2波」に比べて若年層が多くなっていることも特徴です。季節目の変わり目に、ふつうの風邪で体調をくずしている人も増えています。発熱を伴う症状になれば、PCR検査を受けて頂くのは仕方がありません。
弊社のクライアントでも発熱をした社員に対してはPCR検査を受診して頂いたケースが増えてきました。第1波のときに比べて、第2波以降については比較的に迅速にPCR検査を受診することが出来ています。
当初は保健所を経由してからでないとPCR検査は受診できませんでしたが、現在は、直接、医療危険で検査を受けることが出来ます。クライアントの取締役の方で、全国的に出張をする必要があるために既に3回もPCR検査を受診している方もいます。
第3波の到来を踏まえて、下記の対応を検討している企業も増えてきました。
- □
会社方針として、定期的に、社員を全員に対して
PCR検査を受診して頂くことを検討していきたい。
上記のご相談に関して、11月の末から、ご相談が増えてきました。検査体制は整備されてきましたが、強制的にPCR検査を受診して頂くことは難しい状況になっています。
新型コロナウイルスの対応は走りながらの対応となっているのが実情です。法的に確実に言えることは現行でも新型コロナウイルスは下記の取り扱いになっています。
≪安衛法の視点≫
- □
安衛法68条(病者の就業禁止)
事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、
厚生労働省令で定めるものに
かかつた労働者については、
厚生労働省令で定めるところにより、
その就業を禁止しなければならない。
- →
新型コロナウイルスは68条の対象とはなっていません。
また、労働安全衛生規則61条2項は、下記のようにも規定しています。
- □
事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、
あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。
- →
68条を発動させるときは、産業医の意見なども要件に定めているのです。
≪感染症法の視点≫
- □
新型コロナウイルスは、
感染症法6条8号の「指定感染症」と定める政令が公布されましたので、
感染症法に基づく就業制限が課されます。
- □
(感染症法施行規則11条2項3号、同条3項)
感染症の患者や無症状病原体保有者(またはその保護者)は、
都道府県知事から感染症法18条1項による通知を受けた場合には、
同条2項に基づき、病原体を保有しなくなるまでの期間、
飲食物に直接接触する業務および接客業その他の多数の者に接触する業務に
従事することが禁止されます。
- □
まん延のおそれがなくなったときは、感染症の患者等は、
都道府県知事に対し、感染症法18条3項に基づき、
同条2項の対象者ではなくなったことの確認を求めることができます。
- →
従業員が新型コロナウィルスに感染したときは、
事業者が労働安全衛生法に基づき就業を禁止するのではなく、
「当該従業員自身」が感染症法に基づき
就業を禁じられることになるのです。
上記の法的な取り扱いの中で強制的にPCR検査を受診して頂くことは、難しい状況になっているのが実情です。また、PCR検査を受けることが検査体制に関して、厚生労働省はHPで公開しています。
- □
1日あたりの日本の検査キャパは、84,585件です。
- □
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1
当然、自治体によって異なりますが、日本のすべての企業が月に1回のペースで検査ができるようなキャパは小生のような素人の感覚でもあり得ないと認識しています。また、第1波のときに、発熱をしてもすぐに検査をしないようにQ&Aで案内して死亡者が出たために、当該Q&Aは削除されたはずです。
厚生労働省も企業のPCR検査対応に関して触れていない状況なのです。第3波の襲来により、PCR検査の受診も増えてくるので先月までのように簡単には受診できなくなるような気がしています。
日本は他の国に比べて、個人の自由を尊重する考え方の下、法的に行動制限をかけたり、強制することは難しいのが実情です。更に、個人情報が厳格なため、健康情報に関して安全配慮義務の観点から安衛法が個人情報保護法よりも優先するとの回答になりました。それでも、健康情報の取得に関して要注意が必要になっております。
強制的な対応は難しいので、会社方針としてではなく、個別に対応して検査を受けて頂くのが実情になっております。地域性を踏まえて、個別に判断していく必要もあります。
新型コロナウイルスの対応は未知の分野の対応のため、意識を切らせることは難しいのが実情。大切なことは下記の意識のはずです。
- □
『分かっている』と思わないようにすること
難しい対応をしているときに過去の分析や現状の分析は大切です。それでも、難しい対応をするときに過去のデータだけや過去の成功事例だけに頼ってはいけないと戒めております。『分かっている』と思ってはいけないのだと、週末に一人になり自分を戒めていました。
作成日:2020年12月7日 屋根裏の労務士