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「初心忘るべからず」

5月の時期は、座学で研修を受けていた学卒の新入社員がOJTの対応で現場に配属されます。5月の下旬になると実際に、周囲の補助を受けながら、一応、一人立ちをして現場デビューをしていきます。そのため、現場には、素人が多くいるのです。

ビジネスでは取引先を選べても、基本的には担当者は選べません。担当者をあてがわれたら、その担当者と付き合うことになります。

  • 誰でも、自分の大切なことであれば、
    「出来る人」に対応して頂きたいです。

新人の育成や勉強の一環に、出来れば、自分の時はあてがわれたくありません。しかし、誰もが新人だった時があり、未熟な新人の自分を選んで頂いたり、社会から育てられた経験と感謝の気持ちがあります。

  • 新人を嫌がっていたら、
    会社も回っていかないし
    社会も回っていきません。

ある意味、お互い様です。そのため、新人をあてがわれて露骨に嫌がる客は少ないと思います。また、サービスの内容によってはベテランよりもフレッシュな新人を求められるニーズもあります。新人でもセンスが良い人もいます。ベテランでも機能していない人も多いです。

実は、私は、5月の時期は意外と多岐にわたり自分のことや自社のことを行う月でもあります。3月、4月は繁忙期なので、自分のことを対応している時間はありません。

5月に、自分や自社のことを対応することが多いため、新人が担当者になることが意外と多いのです。今年の5月も、自分の身の回りや自社のことをいくつか対応しました。新入社員と接するときに下記の大切さをいつも改めて戒めています。

  • 「初心忘るべからず」

世阿弥の「風姿花伝」の中の言葉です。この言葉は、能楽や演技論の枠組みを越えて、さまざまな場面で人生訓として使われています。

  • 始めた頃の前向きな気持ち。
    始めた頃の謙虚な気持ち。
    始めた頃の真剣な気持ち。

そんなプラスの気持ちを、モチベーションをもって、持ち続けていくことの大切さ。そんな「大切さ」を説いています。そして、「大切さ」というのは、得てして「難しさ」でもあります。

実際、何か始めた頃というのは、まだ、「現実の厳しさ」を何も知らいないし、何も分かっていません。だから、モチベーションが高いのが当たり前なのです。しかし、そんなモチベーションも「現実の厳しさ」を突き付けられて、時間の経過とともに劣化して、萎えていってしまうのです。

年初や期首に立てた目標を年末や期末に達成している人どころか、立てた目標を覚えていない人も多いのが実情。現実とは厳しく、何より残酷なものです。

下記の2つのことを突き付けられるのも、5月の現場デビューをしてからになります。

  • 「客という存在」
    「プロという意味」

机上でいくら教えても、教えられないことがあります。教わることではなく、実戦に身を置き、身につけて高めていくことがあるのです。

令和の時代は、世の中が複雑化しているうえに、コロナがあるため、コミュニケーションがスムーズではありません。人材育成は、更に難しくなっているはずです。

どの業界でもマニュアルだけでも膨大な量となり、大変なことになっています。大局的な視点から、ジャッジできる専門者はどの業界でもほとんどいません。

出来る人に出て来て対応して頂くまでに何人もの担当者を相手にしてクリアしていく必要があります。一方、新入社員のように前向きで、モチベーションが高い時期だから、熱心に対応して頂けることもあります。

  • 「初心忘るべからず」

実は、世阿弥が「風姿花伝」で説明している意味は、少し意味合いが違っています。世阿弥がいっている「初心」とは「初心者の初心」のこと。

  • 何度も経験して分かっている。
    自分はベテランであると思っていても
    まだ、自分は未熟だということです。

最初の頃の自分。右も左も分からなかった過去の自分。何度も煮え湯を飲まされた自分。何度も味わった悔しい気持ち。何度も味わった恥ずかしい想い。

何度もどん底まで突き落とされて。何度も這い上がってきた自分。どん底まで突き落とされ、何度も壁にぶちあたり、今にいたるまでの膨大な努力。

世阿弥は、『過去の未熟な状態』だけを思うのではなく、『今の自分も未熟な状態』であると自覚しなさいとも言っています。

  • 『常に未熟な自分』

そんな『常に未熟な自分』を戒めるのは「初心忘るべからず」の言霊に宿る「静かな謙虚さ」と「高き志」だと思うのです。

未来に希望を持ち、モチベーション溢れる新入社員。5月の新しい風に触れながら。「初心忘るべからず」の言葉の意味を何度も戒めています。

作成日:2021年5月24日 屋根裏の労務士

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