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「脱ハンコに向けて」

4月から河野大臣の脱ハンコの推進により、申請書の捺印が不要になり、各種申請業務が簡便化されました。一方で、脱ハンコの初年度ということもあり、役所の方も手探りで対応しており、混乱をまねいている面もあります。

3月末日に届け出をした36協定が2カ月もかかり、6月になって、やっと受理されて戻ってきた監督署もあります。

働き方改革法案の施行により36協定は2年前にも大きく雛形の変更がありました。変更があった2年前の4月施行の36協定も現場でのドタバタの調整対応を含めて、戻ってくるのに、時間を要しておりました。

  • 脱ハンコの事務手続きの簡略化で
    36協定の雛形には、
    印鑑の箇所が無くなりました。

通常の手続きであれば、ハンコが無くなることで手間が省けて申請がスムーズになります。脱ハンコの旗振りをしてくれた河野先生には感謝です。

厚生労働省は脱ハンコに向けた各種案内をしています。しかし、署名やハンコが必要にならないのは『対役所に向けた申請』という観点に関してだけです。

一方で、労使協定関係の申請では、脱ハンコの対応には要注意が必要です。36協定など労使協定関係の申請に関して厚生労働省の案内の中に下記のコメントがあります。

  • 協定書を兼ねる場合には、
    労働者代表の署名又は記名・押印などが必要です

36協定の申請書類と労使協定を兼ねていない企業は弊社で1社しかありません。その1社の企業は昭和の時代から労働組合がある老舗企業です。36協定の申請書類と労使協定を兼ねていない企業は1万社に1社も無いと思います。

  • 署名や捺印をして頂かないと
    『申請用の36協定』と「労使協定用の36協定」
    の2つの36協定を管理していく必要が
    発生してしまいます。

かえって混乱をまねくため、現時点では、従来通り、署名はともかく捺印はして頂いた方が良いと判断しております。捺印がないと労使協定が成立したか否かという確認が取れないからです。

今年の4月1日以降の届け出で36協定は下記の新しい要件が出てきました。

【チェックボックスの要件】

  • 36協定などの協定書には
    下記の内容のチェックボックスに
    チェックをするようになりました。

    ■ 労働者代表が事業場の全ての労働者の
      過半数を代表する者であること。
       ☐(チェックボックスに要チェック)

    ■ 労働者代表が、労働基準法第41 条第2号に規定する
      監督又は管理の地位にある者でなく、
      かつ、同法に規定する協定等をする者を選出することを
      明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により
      選出された者であって使用者の意向に基づき
      選出されたものでないこと。
       ☐(チェックボックスに要チェック)

チェックボックスの内容は、従前でも厚生労働省が届け出に関して確認を強化していた内容です。届け出をした際に、上記の内容に関して電話で問い合わせがくることが多かったので、既に、小生は、送付状に上記の内容を記載して対応していました。

更に、それでも、監督署から電話での問い合わせ確認が来るため、下記を記載したゴム印をつくり付箋につけて届け出をしておりました。

  • 「当該役職の代表者は管理監督者ではありません。
    事業場の全ての労働者の過半数を代表する者です。」

監督署から電話がかかってくると嫌なので下記について確認したことがあります。

  • 「何で、わざわざ、電話で
     問い合わせをしてくるのでしょうか?」

監督署の担当者は下記のように回答していました。

  • 「本省から確認するように言われているからです」

4月からはチェックボックスになったため、上記の付箋はつける必要はなくなりました。チェックボックスの内容に関しては監督署から問い合わせがくることは無くなったはずです。

注意して頂きたいのは、4月1日以降の届け出はチェックボックスが無い協定書では基本的には受理してくれなくなりました。

当初、労働基準監督署は差し替えを求めて受理せずに送り返していました。しかし、あまりにも周知がなされておらず膨大な量のため、対応を切り換える監督署が増えてきているようです。

チェックボックスの別送付やFAXでの確認対応で届け出を取り進めていくようになりました。
更に、最近は電話での確認で初年度は受理していく方針にしている監督署が増えているようです。

就業規則の届け出に関しても会社のハンコと労働者代表のハンコが無くなりました。捺印がなくなり、事務軽減になります。軽減化の取り組みの中で労働者代表の意見書に関しては少し悩ましい状態になっています。

制定届(変更届)の会社印と労働者代表の意見書の確認印は無くなりました。具体的な意見に関してはほとんどの労働者代表が下記のように記載してきます。

  • 特に、意見はありません。

労働基準監督署は、意見書に何も意見が無いと受理してくれません。就業規則の法的な適用効力は届け出自体には効力はありません。内容に関して、確認されますが、届け出は、基本的には事務的な手続きです。

それでも、意見書に意見を記入しないことは、就業規則による労働条件の不利益法理の対応を巡り労働組合側の導入拒否の意思表示として会社側に適正な届け出をさせない対応と考慮されており、労働基準監督署は意見書の意見に関して、『何もコメントがない白紙の意見書』は受理してくれません。

意見書にワープロ入力で「特に、意見はありません。」と会社側が入力。『意見があるのであれば、期日までに意見書に意見を記載して返信』というやりとりで、届け出を進めていくことはあり得ます。

  • 『署名もワープロ入力』

  • 『意見書もワープロ入力』

上記の状態での届け出でも労働基準監督署は、申請に関しては形式に不備がないため、受理してくれます。しかし、労使の適正な対応事項という観点では、意見書に関して、会社側でワープロ打ちして確認をとるという対応は、綺麗ではありません。何か揉めたときに、トラブルになり得ると思います。

意見書に関しては、意見がないのであれば、やはり、本人の自署で「特に、意見はありません。」と記載して頂き、一緒に、署名をして頂くのが妥当な対応になります。原本までは必要はないので、自署の意見書をPDFにして頂き、やりとりするのが妥当な対応です。

上記に関しても、法的に求められる対応を踏まえて都内のいくつかの労働基準監督署で小生と労働基準監督官で擦り合わせをして現実的な対応方針を確認した対応です。

メールでのやりとりは、かえって、手間になることも少なくありません。脱ハンコに向けて、事務軽減がされていく中で『役所への申請という観点』だけではなく、「事業主と労働者の協定性という観点」も必要になります。

脱ハンコの対応の中で、事務軽減になります。一方、裁量労働制の届け出などに関しては、労働基準監督署からの問合せの確認が以前よりも更に強化されている手続きもあります。本省から内部通達が出ており、監督署からの確認を強化するように指示されいる手続きもあるようです。

「就業規則の一括&電子媒体の届け出」などは以前から制度がありますが、あまり周知がなされていないこともあり、事実上、あまり機能していなかった制度です。

労働基準監督署のシステムの関係でワードファイルではなく、htmlファイルにする必要があるのですが、Windowsの進化が早いため、htmlファイルの形式も複数あり、労働基準監督署の方が、正しい形式をきちんと把握していないのです。

窓口にいる方が、あまり精通していないことも多く事業所の数が多い大手企業の申請であれば、「就業規則の一括&電子媒体の届け出」で処理していますが、事業所数が少ない中小企業の場合、かえって面倒なことが多くなっていました。

企業規模によっては、アナログの届け出で、対応していると段ボール3箱分ぐらいの印刷と製本作業、その分の郵送作業が発生することもあるのです。

役所の方も、脱ハンコも走りながらの対応であり、周知をかけながら、システムの不備を対応しているのが実情になっております。

デジタルとアナログを使い分けしながら、走りながら対応していくしかありません。

作成日:2021年6月7日 屋根裏の労務士

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