「雇用保険料値上げと年度更新」
実際にデルタ株からオミクロン株に置き換わり、コロナは弱毒化しており、重症化は少なくなっています。
これまで、政府は、持続化給付金、雇用調整助成金などを筆頭に、様々な給付金を、大判振る舞いをしてきました。
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「日常」を取り戻していくこと
そろそろ、給付金は終了となります。これまで、大判振る舞いした給付金の財源。今度は、税金や保険料などの増額で国民の負担が増えていくことになります。併せて、不正受給の調査も増えてくるでしょう。
7月10日の参議院選挙が終わったら政府は給付金の対応モードではなく、増税の対応モードになるはずです。
既に、雇用保険料に関しては、雇用保険料の値上げが始まっています。4月からは、事業主負担分だけの値上げです。毎月の給与計算には影響していないので。あまり意識にないかもしれませんが、雇用保険料は値上げになっております。
「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が令和4年3月30日に国会で成立しました。令和4年4月1日から令和5年3月31日までの雇用保険料率は以下のとおりです。
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令和4年4月から、事業主負担の保険料率が変更
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令和4年10月から、労働者負担・事業主負担の保険料率が変更になります。
年度の途中で保険料率の変更です。10月の給与計算のタイミングでは要注意が必要です。年度の途中で雇用保険料が値上げになること。これまで、記憶にはありません。
10月の給与計算に際して雇用保険料の控除計算だけではなく今回の労働保険料の年度更新でも要注意が必要です。
繰り返しになりますが、今回、雇用保険料の段階的な値上げに関して、令和4年3月31日の国会で成立しました。5月の下旬に労働局から送付されてきた労働保険料の申告書で、「雇用保険料の保険料率の印字」が間に合わなかったようです。
そのため、申告書では、料率がブランクになっており、保険料率が印字されておりません。「雇用保険料の保険料率の印字」が間に合わなかったというより、申告書の集計に関して、法制度に則り、申告書の大枠の変更が、間に合わなかったようです。
今回は「4月1日~9月30日まで」と「10月1日~3月31日まで」で、概算保険料の計算の料率が異なります。イメージでは下記のようになります。
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令和4年度の年度更新の概算・雇用保険料の計算イメージ
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今期の確定保険料の賃金額が、仮に、100,000,000円であれば、
雇用保険料の概算金額は下記になります。
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「4月1日~9月30日まで」の賃金に対しての概算雇用保険料
(100,000,000円÷2) × (9.5/1000) = 475,000円 - ・
「10月1日~3月31日まで」の賃金に対しての概算雇用保険料
(100,000,000円÷2) × (13.5/1000) = 675,000円 - ・
今期の概算雇用保険料
475,000円 + 675,000円 = 1,150,000円
また、雇用保険料の計算に際して、年度のちょうど半分での切り替わりですので、下記のように計算しても、問題ありません。
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{(9.5/1000)+(13.5/1000)}÷2 = (11.5/1000)
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100,000,000円 × (11.5/1000) = 1,150,000円
切りの良い100,000,000円で計算していますので、概算保険料の計算結果は、当然、1,150,000円で同額なります。
実際は、保険料の計算は100円未満切り捨ての1000円単位です。そのため、前期と後期で金額を半分に振りわけるときに端数が出てきて、端数を前期に入れて計算するなど手間が発生します。
毎年、厚生労働省は、「年度更新申告書計算支援ツール(エクセル)」を案内しております。本年度も、「年度更新申告書計算支援ツール(エクセル)」が更新されました。今年の支援ツールでは、算定基礎賃金の集計表エクセルの最下段に下記の項目が追加されました。
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概算保険料(雇用保険分)算定に係る留意事項
上記に保険料率を入力すると「4月1日~9月30日までの賃金」と「10月1日~3月31日までの賃金」の区分に振り分けられて、「申告書記入イメージ」に反映されます。
法案が成立したのが3月31日でしたので、給与計算ソフトや手続きのソフトが年度の途中で雇用保険料が変わる対応に間に合っていないケースもあり得ます。
今回は、システム任せにするのではなく、念のために、雇用保険料はアナログで手計算をして、金額を入力するようにした方が間違えは少ないでしょう。既に、ソフトウエアの改定に伴って、バグが発生して、集計エラーが出ているソフトもあるようです。
ちなみに、e-Govの電子申請では雇用保険料は、自動計算をする手続き画面を選択した場合でも料率入力が出来ないようにしてあり、賃金額から雇用保険料を自動計算にならないようにしてありました。
そのため、雇用保険料の概算保険料は、アナログで計算して、金額を入力するという対応になります。
労働局の担当官の話では今期は、雇用保険料を計算しないで労災保険だけを申告してくるミスは想定しており、その場合、差し戻しをさせる旨を話しておりました。端数対応などに関して、結局、翌年度の確定保険料で1円単位まで清算するので、差し戻しはしない方針の様です。
リーフの中では、今期の対応に関して注意事項の記載はあります。別用紙で、要注意で案内してありませんので慣れている担当者の方が、毎年のルーチン処理として、リーフを確認しないで、機械的に処理して、ミスをしてしまうかもしれませんので、要注意をしてください。
今期の概算保険料の欄について、間に合わずに、綺麗に出来なかったようですが、来年度の年度更新で確定保険料について上期、下期の記載欄が新しく出来て綺麗になって更新されてくるとは思います。(若しかしたら、来年の確定保険料でも、現行のままで料率記載は無い状態もあり得ます。)
机上では、年度の途中で保険料を段階的に上げる対応だけですが、システム開発は大変な作業になると察しております。システムはあちこちに繋がっているため、少しカスタマイズしただけでも、他の項目に影響が出てバグが起きることも少なくありません。
官僚は、意外とシステムをわかっておらず、霞が関までレビューが届いておりません。法律とシステムの乖離が起きており乖離について内部通達も出ていない状況で管轄判断に委ねていることも、実は、実務では少なくありません。
電子申請の入力でも実際に対応しないことでも、入力表示が出てしまうエラーなどは、レビューを入れても、タイムリーに改善されておりません。
ご面倒ですが、今期はシステム任せではなく、アナログで手計算をして、検算した方が良いと思います。何が起きるかは分かりません。やはり、システム任せではなく、そもそもの法制度を抑えて、アナログで完全に理解しておくことは大切なことです。
弊社のクライアントは、IT企業は少なくありません。IT企業のクライアントの方々は、給与計算の対応などでシステム任せにしておらず、手間になりますが、アナログ対応も徹底しているようです。
作成日:2022年6月13日 屋根裏の労務士